キャリアコンサルタントがジョブ・カードを用いる利点と活用法
働き手からキャリアに関して幅広く相談を受けるキャリアコンサルタントにとって、一人ひとりがもつキャリアの理想形を知ることは非常に重要です。そこで活用されているのが、キャリアやスキルセットを見直すなど、さまざまな役割をもつ「ジョブ・カード」。 この記事では、オンラインキャリア相談サービス「ミートキャリア(株式会社fruor)」のキャリアサポーターである桐山梨奈氏に、キャリアコンサルタントがジョブ・カードを活用する利点や、具体的な活用事例について伺いました。
投稿日:2022年10月26日
目次
プロフィール:
桐山梨奈氏
保有資格:キャリアコンサルティング技能士2級、国家資格キャリアコンサルタント、育休後アドバイザー、コーチング資格
プロフィール:
桐山梨奈氏
保有資格:キャリアコンサルティング技能士2級、国家資格キャリアコンサルタント、育休後アドバイザー、コーチング資格
大手派遣会社にて派遣コーディネーターや営業として、登録面談・求人紹介・求人開拓を担当。2020年よりフリーランスのキャリアコンサルタントとなり、ミートキャリアに参画。育児などライフイベント期の30~40代女性を中心に、ライフステージに合った働き方やキャリア形成のアドバイスを行っている。この他、企業内従業員向けや大学生のキャリア面談、企業向けの研修講師も務める。
キャリアコンサルタントがジョブ・カードを活用する利点
——はじめに、ジョブ・カードとはどのようなツールかの説明をお願いします。
桐山氏「ジョブ・カードとは、生涯を通じたキャリア・プランニングや、職業能力を証明するなどの機能を担うツールです。企業で働く方や学生などにキャリアコンサルティングを実施する際や、求職活動、職業能力開発などの各場面において活用することができます」
——キャリアコンサルタントがジョブ・カードを活用する利点は何でしょうか。
ジョブ・カードを使ってキャリアコンサルティングを行う利点は、主に3つあります。
1つ目の利点:相談者の情報把握がしやすい
桐山氏「まず、1つ目は、相談者の情報が把握しやすくなる点です。ジョブ・カードにはさまざまな様式があり、このうち様式1『キャリア・プランシート』では、キャリアに対する考え方や希望などを、様式2『職務経歴シート』ではこれまでの職務経験などを簡単にまとめることができます。
キャリア相談は通常60分間などの限られた時間内で行うため、いかに相談者の情報や考えを引き出せるかがポイントです。このときジョブ・カードがあれば、スムーズに情報が把握できるでしょう。
また、相談者自身にも、しっかりと準備してキャリア相談に臨むことができるというメリットがあります」
2つ目の利点:キャリアコンサルティングがより効果的になる
桐山氏「2つ目は、キャリアコンサルティングがより効果的に実施できる点です。ジョブ・カードを用いる場合でも、相談者の方がすべての欄を埋めてから参加するとは限りません。中には『書くことが思い浮かばなかった』という方も少なからずいます。
ここで重要なのは、欄を埋めることよりも、自身のキャリアについて向き合うきっかけとすることです。欄が埋まっていないのなら、『この相談時間内で、ジョブ・カードを見ながら一緒に考えていきましょう』と相談者を導きます。ジョブ・カードには、キャリアコンサルティングで問いかけたい内容が項目として記載されているからです。
特に相談者が『埋められない』と感じる欄は、今その項目につまずいている証拠でもあります。共にジョブ・カードの記入を進めることで、相談者が望むキャリアの方向性や必要な行動をより明確にできるのです。
そして相談が終わったら、相談者側がジョブ・カードを持ち帰ります。ジョブ・カードにはテキスト(文字)で言語化されていることでそのときの相談内容を振り返ったり、自身で内容をブラッシュアップしたりすることもできるので便利です」
3つ目の利点:キャリアコンサルタントとしての経験不足を補う
桐山氏「3つ目は、キャリアコンサルタントの経験不足を補ってくれることです。キャリアコンサルタント(特にキャリアコンサルタントになって日が浅い方)の中には、定められた相談時間の中でどのように相談を進めたらよいのか迷ってしまう方もいるでしょう。
そんなときにジョブ・カードの様式1『キャリア・プランシート』や様式2『職務経歴シート』を活用すれば、キャリアコンサルティングを順序立てて進めていくことが可能です。
もし相談者が『そもそも何がしたいのかがわからない』『働いた経験があまりない』場合は、様式1−2『キャリア・プランシート(就業経験がない方、学卒者等用)』や『キャリア・プラン作成補助シート』を活用することもできます。
必要に応じてジョブ・カードを利用していけば、自然と充実したキャリアコンサルティングになると思います。
また様式1『キャリア・プランシート』には、キャリアコンサルティング実施者の記入欄があります。相談時間が終わるタイミングの短時間で数百文字程度のコメントを記載するため、手早く相談内容をまとめ、相談者の背中を押すようなコメントを残すという訓練の場にもなると思います」
「キャリア・プランシート」より抜粋
キャリアコンサルティングにおけるジョブ・カードの活用例
——これまでジョブ・カードを活用して相談を受けた中で、印象的だった事例を教えていただけますか。
桐山氏「以前、子育て中の40代女性のキャリア相談で活用しました。まず、ジョブ・カードの様式2『職務経歴シート』を使って、職務経歴の振り返りを実施しました。書き出してみたことが初めてだったようで、案外色んなことをやってきたんだなという発見や、一貫性がないと思っていたけれどこういうところには共通点がありそうだといった気付きがありました。
そして、話すうちに、これまでは『子どもがいるからパートでしか働けない』と視野が狭まっていたけれど、『今はパートで働き、子どもの手が少し離れたら起業する道もある』という考えに至りました。相談の最後には『すでに独立起業している先輩に話を聞き、情報収集します』と、明るい表情で退出されました」
——ジョブ・カードの活用によって、キャリアが上手に整理できたのですね。他にも印象的だった事例はありますか。
桐山氏「先日は、入社1年目の20代男性のキャリア相談で活用しました。彼の会社には20代後半〜30代の社員が非常に少なく、キャリアについて気軽に相談できる先輩がいないといいます。そのためキャリア相談の冒頭では非常に表情が硬く、『話すことは特にありません』と取り付く島もない状態でした。
そこでジョブ・カードをベースにさまざまな話を進めた結果、現状どのようなことに困っているのか、何が課題だと感じているのか、その課題を克服するためにどうしたらよいのかなどを共に整理できました。最終的には『このように話せる機会があってよかった。定期的に相談の機会がほしい』という要望をもらい、有意義な時間だと感じてもらえたようです」
キャリアコンサルティングでジョブ・カードをさらに活用するコツ
——ジョブ・カードを上手に活用するコツのようなものはありますか?
桐山氏「ジョブ・カードを上手に使うコツは、主に2点あります。
一つ目は、まずはキャリアコンサルタント自身がジョブ・カードの作成に取り組んでみることです。実際にジョブ・カードに記入していくと、『この項目が書きにくいな』『この順序でシートを埋めていくとスムーズにできる』といった感触が掴めます。
その際の体験は、相談者のキャリアコンサルティングでも必ず活きるものです。まずは自身が経験することをおすすめします。
もうひとつは、ジョブ・カードを適切に使い分けることです。キャリア相談前に、ジョブ・カードの様式1『キャリア・プランシート』を書こうと思っても、なかなか筆が進まない方も多くいます。その際におすすめなのは、様式2『職務経歴シート』から書き始めることです。
実際に書いてみるとわかるのですが、まずは職務経歴や学んだこと、習得したスキルなどを整理し、その上でキャリア・プランに向き合う方が、取り組みやすいと感じるかもしれません。
また、補助ツールである『キャリア・プラン作成補助シート』を使えば、自己分析がより行いやすくなります。こうしたさまざまなシートを適切に使い分けられると、キャリアコンサルティングが実り多いものになるはずです」
——最後に、これからジョブ・カードを使うキャリアコンサルタントに向けて、メッセージをお願いします。
桐山氏「キャリアコンサルタントが相談者と良好な関係を持ち、より効率的にキャリアコンサルティングを実施するためにも、ジョブ・カードは有用なツールだと思います。まずは自身が取り組み、その後さまざまな相談者へ積極的に活用してみてはいかがでしょうか」
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ジョブ・カードを作成することで、自分の強み・弱みや能力に気付くことができ、これまでの経験を踏まえた将来のキャリア・プランとそれに向かってやるべきことが描けるようになります。また、作成したジョブ・カードは就職活動や転職活動でも活用することができるようになります。
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アカウント登録をして定期的にジョブ・カードの見直しや確認を行いましょう。
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