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40代はキャリアの悩み時?ミドルから始めるキャリア自律

40代を中心に、経験豊富な立場になってから改めて自身のキャリア形成に悩んでいるという人は少なくないようです。昨今、日本では、これまで主だった企業主導のキャリア形成から、個々のビジネスパーソンが自発的にキャリア開発・形成を行う流れに変わりつつあります。そのように個人主体でキャリアを考える機会が多くなった影響から、後輩や部下等の若手の指導を任される立場の方もキャリアに悩む人が増えていると考えられます。そこで今回は、キャリアコンサルタントの篠原真喜子さんに、ミドル世代のキャリア自律について伺いました。

投稿日:2024年1月29日

目次

ミドル世代が抱えやすいキャリアの悩み

キャリアの悩みは若い世代が抱えるものと思いがちですが、経験を積み、中堅社員や若手の指導に当たるようになった立場の方々も、自身のキャリアに思い悩むことが少なくありません。そこには、時代の変遷に加えて、ベテランになったがゆえの成長へのジレンマが関係していると考えられます。

篠原さん
「若い時はどんな仕事も新鮮で、ささいな経験からでも成長を実感できる機会が多いでしょう。けれどもベテランになるにつれ、多少のトラブルなども今までの経験でカバーできるようになっていきます。その結果、自身の成長が停滞しているように感じられ、『このままで良いのか』と今後のキャリアに漠然とした不安や焦りを抱くようになる人もいます。

それでも年齢に応じた役職が与えられていると、認められているという実感が得られ、『この会社でもう少し頑張ってみよう』という気持ちがわきやすいでしょう。しかし、そうでない場合は、『このまま会社に居続けることに意味があるのだろうか』という疑念が強まり、キャリアに思い悩んで転職を考えることもあるようです」

育児、介護、スキルへの迷い…悩みを抱えやすい年代

ミドル世代のなかでも特に40代は、キャリア形成の悩みを抱えやすい年代といわれています。
一般的に40代は、専門領域を見極め、その後のキャリアの方向性を再探索していく時期に当たります。そのため人生の後半戦に向けて、キャリアビジョンを明確化しておこうと考え出す人が少なくありません。

一方で、親の介護や子どもの教育といったプライベートの悩みが生じやすくなる時期でもあり、仕事とプライベートのバランスに悩むことも多々あります。こうした様々な事情を抱えやすいことが、40代が悩みを抱えやすい年代といわれるゆえんなのでしょう。

今求められている「キャリア自律」とは?

昨今、「キャリア自律」という言葉を耳にするようになりました。キャリア自律とは、「一人ひとりが主体的に自らのキャリアを形成すること」と言い換えることができます。

篠原さん
「日本では従来、キャリア形成を会社に任せている部分が多々ありました。新卒で入社した会社に定年まで勤め上げるのが一般的で、会社内でスキルを身につけていけば、自然とキャリア形成につながっていたからです。ですが近年では、雇用制度の見直しと労働市場の多様化などから、会社主体ではなく、個人が主体的にキャリア形成を行うことが求められるようになってきています。

また、『自律』とよく似た言葉に『自立』があります。その違いは様々ですが、私は、自分自身でキャリアを確立することを自立。自立したうえで自分以外の周囲と調和したり、連携したりしながらキャリア形成していくことを自律と表現しています」

ミドル世代がキャリア自律を考えるうえで意識したいポイント

40代を中心としたミドル世代がキャリア自律を考える際に重要となるのが、「キャリアの棚卸し」です。

キャリアの棚卸しとは?

篠原さん
「キャリアの棚卸しとは、社会人になってからの自身の経験を振り返り、職務内容や業績、そこで得たスキルなどを掘り下げることをいいます。 今まで得てきた経験や能力を掘り下げることで、自らの強みや、やりたいこと、ありたい姿などを明確にすることができるでしょう。

キャリアの棚卸しをする重要性やメリット、その方法

これまでのキャリア形成は会社主導で行われることが多かったため、30代~50代の約7割は、自らのキャリアの棚卸しができていないといわれています。今後転職を視野に入れるとしても、今の会社で働き続けるとしても、キャリアの棚卸しをすることは、今まで気付いていなかった自分の強みに気付き、自身の理想の姿を明確にできる絶好の機会といえます。

篠原さん
「キャリアの棚卸しをするのが良いといわれても、いざ自分の経歴や実績を書き出すと、『自分には誰かにアピールできるキャリアなんてない』と悩んでしまう方もいらっしゃいます。キャリアの棚卸しがなかなか進まないのは、『自分を客観的に見る』という行為が難しく感じられるからかもしれません。

自分を客観視するのは、自分という主観的な対象を客観的に分析するという、非常に難易度の高い行為です。一人で行うと、端から見るとすごいと感じるスキルや経験があるのに気付かなかったりすることがあります。

ですから、相談相手がいたほうが良いのです。友人、知人、会社の同僚、そして私たちキャリアコンサルタントなどと一緒にキャリアの棚卸しをして、自分では見過ごしていたスキルに気付くきっかけを作ってください」

▼キャリアの棚卸しを考えるヒントに!

キャリア形成・学び直し支援センターで専門家に相談も 
キャリア形成・学び直し支援センターでは、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを無料で受けることができます。キャリアの悩みや不安、今までのキャリアの振り返りなど幅広い相談が可能です。自分のキャリアについて考えたいという方は、ぜひ利用してみてください。

《詳しくはこちら》
▶ キャリア形成・学び直し支援センター(キャリガク) 【厚生労働省委託事業】

キャリアの棚卸しで生まれる、学び直しの機会

キャリアの棚卸しによって不足しているスキルがあることに気付いた場合、学び直しによって、新たに知識や能力を身につけることもできます。

篠原さん
「何を学び直すのかという内容は人それぞれですが、学び直しに適したタイミングは共通しています。自身の今後のキャリアに漠然とした不安や焦りを感じた、その時こそが学び直しのタイミングです。好機を逃さず、ためらわずに新しい学びを始めてみましょう」

キャリア自律にジョブ・カードが役立つ!

社会環境の変化がめまぐるしく、先行きが不透明な時代において、就職活動、転職活動はもちろん、キャリア形成に役立つツールとして、厚生労働省が推奨しているのが、ジョブ・カードです。

ジョブ・カードは、学生、在職者、求職者など幅広い方の求職活動やキャリア形成に役立てることができ、具体的には以下のようなことが可能です。

キャリアの棚卸しができる

ジョブ・カードは大きく3つの様式(シート)で構成されており、キャリアの棚卸しの際には、職務経歴シート(様式2)や職業能力証明シート(様式3-1、様式3-2)が主に役立ちます。この2つのシートを作成することで、自分のスキル、職業能力、経歴、免許・資格が明確になり、キャリアの棚卸しにつながります。

篠原さん
「これまでの仕事で培ってきたもの、獲得した資格などをシートにしっかりと記入し、自身のキャリアを客観的に見つめられるようにしましょう。

ジョブ・カードは、転職を希望していない人にも有用です。まずは記入してみて、その後は年に一回程度、定期的に更新していくことをおすすめします。仕事で身につけたスキルや能力は、経験に応じて年々変化していきます。ジョブ・カードを定期的に更新することで、自分のキャリアがどう変化したのかを知ることもできます」

様式2 職務経歴シート様式3-1職業能力証明(免許・資格)シート

様式3-2職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート

《職務経歴シート(様式2)、職業能力証明シート(様式3-1、様式3-2)の作成はこちら》
様式2 職務経歴シート
様式3-1職業能力証明(免許・資格)シート
様式3-2職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート

今後のキャリアプランをイメージできる

職務経歴シートや職業能力証明シートを記入してキャリアの棚卸しができたら、キャリア・プランシート(様式1-1)を作成し、自分の希望やなりたい姿をイメージしてみましょう。

とはいえ、いきなり自分のなりたい姿を記入するのは、なかなか難しいもの。その場合は、キャリア・プラン作成補助シートを活用するのがおすすめです。価値観や興味関心、強み、弱みなどに関する質問に答えていくと、おのずと自分がやりがいを感じていることや、苦手なことが見えてくるので、今後自分がどのようなキャリアを築いていきたいかが見えやすくなるでしょう。

篠原さん
「キャリア・プラン作成補助シートの設問のなかには、自分としっかり向き合わなければ書けないような自由記述の項目もあります。そうした項目を入力する際、どう入力して良いのかわからなくなることがあれば、下書き保存をして、別の欄を埋めてから、また戻って回答するのも良いでしょう。回答はスマホからも可能です。あまり難しく考え過ぎず、空き時間などに少しずつトライしてみると良いでしょう」

様式1-1キャリア・プランシート(就業経験がある方用)キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)

《キャリア・プランシート(様式1-1)、キャリア・プラン作成補助シートの作成はこちら》
▶ 様式1-1キャリア・プランシート(就業経験がある方用)
▶ キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)

記入例を参考にしたり、キャリアコンサルタントに相談しながら作成できる

職務経歴シートやキャリア・プランシートなどの記入に迷った場合も、ジョブ・カードでは記入例が豊富に用意されています。ご自身に近い年代や職業の方の記入例を参考にしながら、回答を作成してみましょう。

《記入例はこちら》
▶ 記入例を見る

また、必要に応じてキャリアコンサルタントから、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを受けることも可能です。キャリアコンサルティングを受けることで、ジョブ・カードがブラッシュアップされ、これまで積み重ねてきたキャリアや人生経験が、自分の適性や能力として客観的に描き出され、さらに、それを今後どう生かしていくか、方向性や次のアクションがはっきりしてくるでしょう

まとめ

ジョブ・カードは、学生から社会人まで幅広い人が利用できる様式になっており、経験豊富なミドル世代のキャリア形成にも十分に役立てることができます。

篠原さん
「ミドル世代は、仕事で築いてきた経験も、プライベートで抱える問題も様々で、その人に合ったキャリア形成への支援がより必要な年代です。

たとえ安定しているといわれる企業に勤めている人であっても、刻々と変化する環境において自分のキャリアを構築し、学習を続けることが非常に重要だと、キャリアコンサルタントとして日々感じています。

今40代の人なら、定年まではまだ20年近くあります。だからこそ、ちょっと立ち止まり、ジョブ・カードを使って自己分析したり、客観的な視点で今の自分を見つめ直してみたりして自分自身のことを理解し、将来どのようなキャリアを目指したいのかを考える時間をとってみてください。それが、『主体的なキャリア形成』=キャリア自律につながるはずです」

【出演いただいたキャリアコンサルタントのプロフィール】

篠原真喜子様
国家資格キャリアコンサルタント。2003年 新聞社に入社。自身の就活経験を生かして、大学生向けの就職フェアを立ち上げ、多くの学生を支援する一方で、自身もミドル世代であることから、部下や後輩などの指導的立場に当たる相談者もサポート。プライベートでは二児の母であることから、仕事と家庭のバランスに悩む相談者へのアドバイスに定評がある。

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ジョブ・カードを作成することで、自分の強み・弱みや能力に気付くことができ、これまでの経験を踏まえた将来のキャリア・プランとそれに向かってやるべきことが描けるようになります。また、作成したジョブ・カードは就職活動や転職活動でも活用することができるようになります。
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